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焼付塗装とは

塗料の乾燥を短時間(20〜40分)で行える塗装方法です。もちろん塗料は焼付専門のもので、塗料ごとに焼付温度は決まっていて、規定時間焼付乾燥した塗膜は即使用可能な、設計どおりの強靭な塗膜になります。

塗装前    下塗り後
焼付乾燥 上塗り後

焼付塗料について      

加熱される事により塗膜に重合反応が起こり、緻密な塗膜が完成される塗料。
温度、時間が足りない場合は極端に性能の落ちた塗膜になり、逆に多すぎる場合は黄変・艶引けなどの現象が表われます。



焼付温度


一般に メラミン系は120〜150
     アクリル系は150〜180
       フッソ系は160〜180 で20〜30分保持されると完全硬化した塗膜になります。注意が必要なのは、素材温度が上記の温度になる必要があり、雰囲気温度ではありません。そのため質量の大きい被塗物の場合は温度管理に特に注意が必要です。ですから、長い物だから半分づつ焼いて、といわれてもチョット無理になります。


 


 

塗料の種類

自然乾燥(ラッカー、フタル酸等)および二液反応型(シリコン樹脂を除く)は別にして一液焼付型塗料について


メラミン樹脂塗料(色、艶自由)
 主に内装品、弱電部品に使用。身近な例では事務用机、ロッカー、金属製棚など。

アクリル樹脂塗料(色、艶自由)
 各性能とも非常に優れた塗膜で、主に外装品に使用。アルミサッシ、金属製パネルにはよく使われています。

フッソ樹脂塗料(色、艶若干制限あり)
 超耐候性塗料、化学的性質にも優れ長期耐用を必要とする箇所へ使用。
金属製外装パネルに多用。

エポキシ樹脂塗料(色、艶制限あり)
 密着、耐水、耐薬品性に優れているが耐候性はなく、主に下塗りとして使用。

シリコン樹脂塗料(色、艶自由)
 種類はありますが、現在使用中のものはアルミ、ステンレスに下塗り無しで密着し乾燥温度も低いのが特長でプラスチックの組合わさった製品の塗装に適しています。

耐熱塗料もシリコン樹脂を主成分にしています。
(色、艶制限あり)

 

粉体塗料
 粉の状態の塗料を熱または静電気で被塗物に付着させ加熱溶解して塗膜にします。粉体塗料の製造に量の制限があり、小ロットの製造は出来ません。量産品にはよく使用されており、溶剤規制の昨今徐々に増えていくものと思われます。
粉体塗料にも樹脂の種類があり使用目的に応じて使い分けます。




参) 仕上がった製品を見てどんな塗料が使用されているかは判りません。膜厚を測ったりシンナーを含ませたウエスで拭いてみたり、硬度を調べたり、塗膜の肌からなんとなく想像することは可能ですが、確定は出来ません。特に溶剤系の塗装で丁寧に仕上げていれば塗料の種類は見当が付きません。


 


 

各塗料の性能

各塗料の一般的性能は下図のようになりますが、機能を特化させた塗料もあり、一概にメラミンだから、アクリルだからという表現は通用しないみたいです。

 




























溶剤




















 メラミン樹脂

 アクリル樹脂

 ウレタン樹脂

 フッソ樹脂

 シリコン樹脂

 エポキシ粉体
ポリエステル粉体 1







メラミン樹脂塗料を
基準としての5段階
評価

※ 塗膜の性能は上塗り塗料の種類だけでなく、素材、塗装工程によって大きく変化します。
これらの事前の打ち合わせを充分にされるよう御願い致します。


 

仕上げの程度

剥がれなければいい、からゴミ一つ無い塗装まで要求される仕上げの程度は様々です。
一般に弱電部品は表面の仕上げにうるさく、建築部材は膜厚、色、耐候性に注意が必要です。仕上げの要求程度により工程、価格は変わります。事前の打ち合わせ(表面と裏面、見える面と見え無い面など)を十分にされ、無駄な手間をなくすのも価格低減に役立つものと思われます。『面倒だから全部塗って』なんてもったいないことです。


 


 

標準工程

標準塗装工程は下記の通りですが、仕上げの程度、要求される機能等により工程および使用材料は変わります。

スチール内装品
脱脂 熱硬化型エポキシ系プライマー 指定色上塗(メラミン又はアクリル)

スチール外装品(アクリル樹脂焼付)
脱脂 端部、研磨部ジンク処理 熱硬化型エポキシ系プライマー 指定色上塗

アルミ・ステンレス外装品(アクリル樹脂焼付)
脱脂 化成処理 熱硬化型エポキシ系プライマー 指定色上塗

スチール外装品(フッソ樹脂焼付)
脱脂 端部、研磨部ジンク処理 熱硬化型エポキシ系プライマー 中塗 指定色上塗

アルミ・ステンレス(フッソ樹脂焼付)
脱脂 化成処理 熱硬化型エポキシ系プライマー 中塗 指定色上塗

1 必要に応じて研磨作業


 


 

色、艶について

早い話当社で色を決めることはありません。指定された色見本のNo.や提示された色見本により当社あるいはメーカーで調色を行ないます。焼付塗料の場合は自動車用のウレタン樹脂塗料と違って原色の数が少なく、自動車のような微妙な色の調色には向いていません。特にメタリック、パール仕上げになると、どうしても近似色になってしまいます。
艶有りと艶消しでは艶消しのほうがやや白っぽく見えるのは御存じのことと思いますが、素材の歪を隠すためにと「全艶消しでは何だから、3分艶有りか半艶ぐらいで塗装したら歪が解らなくなる」ような気がしませんか?小さな面積の物ならそうなりますが大きな面積になると意外や意外すっかり歪が目立つようになります。製作上の注意です。


 


熱膨張

鉄、ステンレス製品では特に感じませんが、アルミ製品の場合想像以上に膨張します。特にアルミの補強としてスチールをリベット、ビスなどで固定した製品は焼付した場合アルミがリベット、ビスを支点として曲がるか、リベット、ビスがはじけとぶかどちらかになります。(多いのはアルミの変形ですが)接着剤で貼り付けた裏板は半分剥がれ、もしかして全面に裏板を貼った場合は表のアルミが反ったままで乾燥炉から出てきて無残なものです。設計、製作、受注時の注意点です。
アルミ(5050)の熱膨張係数は 23.4(x10の−6乗/ 20〜100
炭素鋼の熱膨張係数は 11.1(x10の−6乗/ 0〜100
(C 0.58 Mn 0.92 Si0.25)

[華園繁彌著/概説金属塗装工学より]


模様塗装

模様塗装には2種類あり、塗料そのものが模様になるもの(チヂミ、ハンマートーンなど)と塗装方法により模様になるもの(石目調、木目調など)があります。前記の塗料は塗料の入荷に時間が掛かり、後記のものは塗装工程が多くなり比較的納期が掛かります。模様塗装の場合、結局はどちらも納期が掛かるみたいです。ご容赦の程。




木目模様

石目模様


膜厚について

塗装はミクロン単位です。たとえば下塗10ミクロン、上塗20ミクロンとか、最近は弱電部品でも厚膜が好まれる傾向にありますが、アクリル焼付で30ミクロン前後、フッソ焼付で45ミクロン前後を標準として設定しています。橋梁などでは何百ミクロンと桁違いになりますが、焼付塗装では数ミクロンから100ミクロン前後までの世界になります。


パテ処理

製品を仕上げるうえでどうしても必要なものと思われますが、屋内使用の製品は別として外部設置の製品の場合、出来るだけ使用しないほうが塗膜設計上有利になります。
長期間経過するとパテの部分より割れ、剥がれが発生しやすくなります。
薄板に歪を消すような感じで大きくパテ処理を行なうと、板の伸びにパテがついていかないのか上塗焼付後パテが剥がれてくることがあります。
(なぜか下塗焼付時には少ない現象です)


色見本

基本的には日本塗料工業会発行の色見本を使用しています。これ以外の色については塗料メーカー、鋼材メーカー、サッシメーカー等各団体、各社独自の色見本帳を発行しており、全てを準備するのは不可能に近いものがあり、必要があるたびに当社で揃えたり御客様に揃えていただいたりして対処しています。
色見本の保管で特に注意が必要なのは印刷された色見本で、ひなたに放置したら数時間で別な色になってしまいます。
尚、当社では色見本の製作も承っております。


調色について

メラミン、アクリル、フッソの各塗料に関してはある程度の原色を準備しており、殆どの調色は社内で調達しています。
CCM(コンピューターカラーマッチングシステム)
見本片(15o角ぐらい)を測色することにより必要な原色の配合割合が表示され、その通り配合すれば調色作業は終了します。と言いたいところですが現実は甘くなく、前述の作業で終了するのは全調色数の半分ぐらいで、残りは微調整を繰返して調色します。調色の際の色差の基準はE=1.0以下としていますが原色数が少ないことによりどう頑張っても見本通りの調色が不可能な色が出てきます。このために見本板製作が必要になると思われますが、一般に派手な色、鮮やかな色と感じられる色は近似色になると考えてください。それと高耐久性樹脂塗料(フッソ、セラミック、一部のアクリルなど)の場合、顔料の耐久性を考慮して尚のこと調色範囲が狭くなります。尚、継続して流れる製品や、断続して同じ色が流れる製品については事前に連絡を頂ければ調色データを保存しておきます。


塗膜の試験

促進耐候性、耐薬品性などは工業試験場に依頼したほうが間違いありませんが、自分のところでもっと簡単にとお考えなら碁盤目剥離試験が最も手軽と思われます。

碁盤目試験(塗膜の付着力の試験方法)
塗膜にカッターナイフで素地まで達する線を縦横各11本、1o間隔で引き、セロテープをしっかりはり付けてから一気にはがし、塗膜のはがれ具合で付着力を知る。
厚膜の場合はカッターで切り目を入れている間に塗膜が破壊される場合があるので2oX2oの桝にします。


密着の悪い塗膜は長持しません

溶剤で拭いてみる
焼付不足の塗膜は溶剤を含ませたウェスで表面を軽くこすると、色落ちし、塗膜表面の艶が落ちたり、軟化したりします。
但し、有機顔料の多い塗膜の場合は、強くこすった時の若干の色落ちはしょうがない事のようです。(赤、緑、青などの鮮明な色)
注意
 シンナーを含ませたウェスなどを塗装品のうえに放置すると、その部分が浮いたり、艶が出たりします。ポンとその辺に置かないよう注意してください。


塗装の価格

見積り:

総面積、一個の面積、仕上げ塗料が分かる図面などがあれば見積りは
可能です。

高くなる

安くなる

少ない
小さい
重 い
多 い
高 い

総 面 積
一個の面積
重   量
工   数
仕上げの要求レベル

多 い
大きい
軽 い
少ない
低 い

フッソシリコンウレタンアクリルメラミン

量に関係無い一定料金
・粘着ビニール養生
・アルミ、ステンレス
 の化成処理
・調色料

パテ処理、マスキング等
は程度に応じて

実際、高いといわれるフッソ塗装よりチョットうるさい弱電部品のメラミンの方が
塗装単価は高くなっています。もちろん、総面積、塗装工程がまるっきり違って
いますが。


こんな物を主に塗装しています

基本的に焼付可能な製品であれば何でも塗装しています。

建築部材
店舗用アルミサッシ、ステンレスサッシ、外装パネルなどのアクリル樹脂、フッソ樹脂塗装や木目調模様塗装

内装部材
金属製パネル、什器金物などのアクリル樹脂、メラミン樹脂塗装

弱電部品、機械装置
筺体カバー、配電盤部品などのメラミン樹脂またはレザー、サテン等の模様塗装

屋外構築物
照明ポール、監視カメラポール等の熔融亜鉛メッキされた製品の粉体塗装

その他
オートバイ、自転車、釣りざお、アクセサリー用品などは時々受注しますが、気の向いたときでないとなかなか

手に負えない品物の塗装はどうぞ当社まで
最大乾燥炉寸法 幅2.9メートル×高さ3メートル×奥行10メートル まで

 


標準塗装仕様

素材

塗料の
種類

脱脂

下塗

中塗

上塗

包装

備考

処理鋼板
ペンタイト
ボンデ等

アクリル

溶剤
脱脂

熱硬化型
エポキシ系
プライマー
膜厚1020ミクロン

 

熱硬化型
アクリル樹脂

粘着ビニール養生

上塗膜厚
20
30
ミクロン

フッソ

熱硬化型
フッソ樹脂

熱硬化型
フッソ樹脂

上塗膜厚
40
ミクロン
以上

アルミ

アクリル

洗剤
又は
専用
脱脂剤

※1

熱硬化型
アクリル樹脂

上塗膜厚
20
30
ミクロン

フッソ

熱硬化型
フッソ樹脂

熱硬化型
フッソ樹脂

上塗膜厚
40
ミクロン
以上

※1 生アルミの場合は通常、クロム酸処理を施した後に塗装しますが、長さ、形状等で処理が不可能な場合もあります。この処理をしないと極端に密着性能が下がります。可能ならば加工寸法の打ち合わせをお願いいたします。
素材、上塗塗料によって塗装工程、下塗りの種類は変わることがあります。
色、艶の指定は自由です。(フッソ樹脂塗料の場合は褪色の関係上制限される色があります)
注:処理鋼板の場合、研磨部分(処理皮膜が削り落とされた部分)は耐食性が劣ります。加工上特に注意されるようお願い致します。

粉体塗装
脱脂化成処理予備加熱塗装焼付 上塗り膜厚 40150ミクロン
 化成処理が不可能な大きさの場合はエポキシ樹脂プライマー塗装後粉体塗装
 エポキシ系粉体塗料 主に内部用
 ポリエステル系粉体塗料 一般用 高耐候性ポリエステルもあります


参考資料

重量

内部にH鋼や厚いパイプ等が組み込んである屋外看板等は、重量物となり、どうしても割高になります。外せるものなら外して軽い状態で作業すると計算上安くなります。重さにもよりますが、23倍くらいの価格差が出ることもあります。

透ける色

原色に近い黄色を指定色とされた場合、通常の工程では黄色になりません。白クリーム色黄色指定色黄色と塗り重ねないとキレイな黄色になりません。一回で前記の工程を塗り重ねるのは焼付塗装では危険な作業で、途中何回か焼付しながらの作業になります。結果として価格が上がります。(色によりますが赤、緑、等も似た傾向にあります)
メタリック仕上の場合、上塗りの塗膜の中のメタリック(金属粉)の隙間を紫外線が透過し下塗り塗膜を劣化させます。これを防ぐために中塗りが必要となり、結果として工数が増えます。屋内仕様では特に心配ないと思われ、またメラミン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料でもそれなりの耐用年数と考え、どうしても安くとの要望があれば、相談のうえ中塗り工程を抜くことはままあります。

高価な塗料

例えば、フッソ樹脂塗装の場合、正規の指定膜厚を得るためには塗料の必要使用量が決まってきます。材料費を下げて安くするには、安く塗料を購入するか、薄く塗装して材料を使わないようにするか、又は工程を減らすかしかありませんが
(
塗料は安くはなっていますがまだアクリル樹脂の4倍くらいします)
設計者がフッソ樹脂塗装に期待するのは、超耐候性塗膜であり、フッソが塗ってあればいい塗膜ではないと思われます。
フッソ樹脂塗装に限らず、機能性塗料の場合は、その機能を活かすために決まった塗装仕様のある場合が多く、それを損なうような極端な仕様変更は避けたいと考えています。

特注塗料

最近流行りのセラミック塗料や光触媒塗料、焼付型ウレタン樹脂塗料やハンマートーン等の模様塗料はメーカー調色となるため、別途塗料代が必要となります。購入単位が4kg16kgとなるため、塗装面積によっては無駄になる場合もあります。
 弊社では下記の塗料を常備しています。(自社調色用として原色を揃えています)
           アクリル樹脂塗料  180℃×20分タイプ
           フッソ樹脂塗料   170℃×20分タイプ
           メラミン樹脂塗料  150℃×20分タイプ
           シリコン樹脂塗料   80℃×20分タイプ

分解

たまに組立済のアルミサッシが入荷します。プラスチック部品が組み込まれている場合が多く、そのままでは焼付出来ないので分解してP部品を除いてから塗装するようになります。単純にビスで組み立ててあるのですが、ビスがバカになったり、モールが切れたり等分解ではなく破壊になる場合も時々あります。又、組立済のアルミサッシにはシリコンコーキングが施されていることが多く、これを除去するのに多くの時間が必要となります。
           一シリコンコーキングの上には塗料がのりません一


粉体塗装(静電粉体吹付け法)

粉体塗料を高電圧のかかった粉体塗装ガンにより被塗物に粉体塗料の膜を形成させ、焼付乾燥させることにより塗膜が完成する。
塗料は小麦粉をイメージして下さい。小麦粉の袋の中に手を入れると白い粉の手袋になりますね。このまま焼付(180前後)すると硬い塗膜になる。こんな感じです。

長所
・有機溶剤を使わない
・比較的熟練を必要としない
・溶剤型塗装では塗膜が薄くなるエッジ部が厚くなる
・厚膜になる
短所
・仕上がり感が溶剤型塗装と比較するとやや劣る
・薄膜が難しい
・メーカー調色になり調色の自由度が低い
 主にメーカー在庫色(模様塗料を含めて約200色)からの選択になる
 特注色も可能ですが


  粉体塗料の製造

樹脂

各顔料

混合

溶融ブレンド

冷却

微粉砕

ふるい分け

製品
(粉体塗料)

添加物


上記のような製造方法のため小ロットの調色は不可となります
・色見本を持ち込んでの指定色調色の場合、10
・メーカーにデータのある日本塗料工業会色見本合わせの場合は3
 以上が最小製造ロットとなり塗料の入荷まで24週間必要になります
 (1袋/15s) 納期と初期費用がかかります
  近年、塗料メーカーも小ロット対応を考えているようですが